役員報酬の決め方:節税対策を念頭に置いて考えることが重要

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役員報酬の決定は、節税に大きく関係することをご存知でしょうか。
適切な金額設定にすることで、企業と役員双方が円満な結果になります。
そして、この金額設定は、実は明確な基準がいくつかあります。
ここでは、そんな節税を考えた役員報酬の決め方についてご説明しましょう。

節税のための役員報酬:バランスが大事

節税のための役員報酬設定で重要なのは、バランスです。
役員報酬を高く設定すると、会社の利益が減って法人税は下がりやすくなります。
しかし、その場合受け取った役員個人にかかる税金が増えてしまいます。
所得税や住民税、社会保険料など発生する税金の費用は高くなり、結果的にかえって役員個人の得られる利益が減るというケースは多いです。
おまけに、上述したように会社の利益自体も減るので、双方にとってマイナスの結果に陥りやすくなります。

では、反対に安くすると、今度は法人税が高くなり、役員個人のモチベーションにも関わります。
極端な例を出すと、役員報酬が一般のサラリーマンの給与と大して変わりない場合、役員という役職につくメリットは皆無だといえるでしょう。

このことからわかるように、役員報酬の設定はバランスを取ることが重要です。
適切な金額設定なら会社の利益や法人税増加も抑えられますし、役員個人にかかる税金やモチベーション維持にも可能です。
給料

節税のための役員報酬:利益800万円のライン

法人税を考慮した場合、大前提となるラインがあります。
それが「800万円以下」というラインです。
国税庁が定めた法人税は、一定の金額を超えると、かかる法人税が一気に増えます。
それが、800万円のラインです。

2021年10月時点で、利益が800万円以下の場合、かかる税率は15%です。
しかし、800万円を超えた場合、この税率は23.2%に上昇します。

これは、個人だけではなく、企業も例外ではありません。
例えば、会社の利益が800万円を超えた場合、法人税は23.3%発生します。
そうならないために行うのが、役員報酬の設定です。
上述したように、役員報酬を高く設定することで会社の利益を減らせます。
つまり、役員報酬の設定を行い、会社の利益を800万円以内に抑えられれば、節税対策が見込めるということです。

シンプルな例で説明しましょう。
例えば、会社利益が1000万円の場合、800万円を超えるので係る税率は23.3%です。
しかし、役員報酬を200万円に設定すると1000万円-200万円で800万円となるので、法人税を15%に抑えられます。

注意:役員報酬の変更について

「800万円を超えると税率が増えるのであれば、適宜役員報酬を変更すれば税率を抑えられるのでは」と考える人もいるかも知れませんが、それは実質不可能です。
なぜなら、意図的な報酬変更で税率を下げるという不正を防ぐために、役員報酬変更のタイミングは限られているからです。

役員報酬を変更できるタイミングは「事業年度開始日から3ヶ月以内」となっています。
この期間内であれば、役員報酬の増減は自由にできます。
今年は800万円以上の利益が見込めそうだというのであれば、役員報酬を増額して800万円以下に収められます。
もちろん、見込みよりも利益が低くなる場合がありリ、増額しなくても800万円以下に収まる可能性もあるので、入念な調査と決断が迫られます。

ちなみに、役員報酬の変更にはいくつかの手続きが必要です。
株式会社の場合、株主総会で正式決定し、増額の旨を公表しなければなりません。
そこでの議事録や同意書を作成することになります。
これは、税務調査の際に役員報酬を変更した証明となる重要な書類です。
したがって、この書類がなければ役員報酬の増減を行ったとしても証明できるものがないので、追徴課税の発生に繋がる恐れがあります。

他にも「被保険者報酬月額変更届」の提出が必要な場合もあるので、3ヶ月以内といっても準備そのものに大きく日程がかかることに留意しておきましょう。

節税のための役員報酬:社会保険の加入状況を確認すべし

役員報酬の設定で留意しなければならないのが、社会保険の加入状況です。
基本的に、役員には「健康保険」と「厚生年金」の2つの加入が義務付けられています。
「法人から労務の対償として報酬を受け取っていない」という特殊なケースの場合はその限りではありませんが、こういった事例はレアケースです。
ちなみに、上記の場合は国民健康保険と国民年金の加入が義務となっています。
また、雇用保険には加入できません。
雇用保険は労働者のための保険であり、役員は労働者ではないためです。

社会保険料と役員報酬の話になりますが、健康保険と厚生年金の保険料は、役員報酬の設定金額で変動します。
この2つは「役員報酬の金額(月額)×保険料率」という計算式で計算するため、役員報酬の額が大きくなるほど保険料の負担も大きくなります。

保険料の半額は、会社の経費でおろせますが、金額が大きくなりすぎると、その分会社の利益も下がってしまうのです。

この社会保険を念頭に置かずに役員報酬の設定を行うと、予想とは大きく異なった金額となってしまいます。
したがって、役員報酬の設定は社会保険も組み込んで考えましょう。
計算

節税のための役員報酬:コンサル業者に依頼を

上述した内容からもわかるように、役員報酬を定めるのには入念な確認が必要になります。
年度ごとに変更できるので、企業成長に合わせて変更はできますが、それでも意識して設定している場合と設定していない場合では、数十万円以上の違いが生じます。
そのため、起業を始めたばかりの場合は、入念な確認と設定をすることをおすすめします。

といっても、どのくらいの収支が見込めて、どのくらいの金額設定にしたら一番節税対策になるのかというのは、入念に考えても判断がつかない場合がありますし、思いがけない自体が発生して結局節税対策に思ったような成果が得られなかったというケースもあります。
そういったリスクを減らす方法として最善なのが、コンサルタントに依頼してアドバイスを貰うことです。

複雑な数字が絡む問題は、素人が長時間考えるよりも、その道のプロに任せてアドバイスを受けたほうが、結果的な利益は発生しやすくなります。
確かにコンサルタントに依頼し、相談することで費用は発生しますが、それ以上に計算にかかる時間や失敗したときのリスクを考えると、最も無難で被害を最小限に抑えやすくなる方法といえるでしょう。
その他にも、コンサルタントに依頼することで得られるメリットは、以下のものがあります。

役員報酬の透明性を高くし、株主や親会社に安心感を与える

コンサルタントに依頼する上で、意外と軽視できないのがこちらです。
設定した役員報酬額を説明するとき「なぜこの金額になったのか」という説明を求められることは多いです。
その際、専門家に依頼し、適切な金額を導き出したという説明を行うだけでも、相手に与える安心感は大きく変わります。

また、支払う役員に内訳や理由を説明する際にも、納得の行く説明をしやすくなるというのもポイントの一つです。

業務工数の削減につながる

もっとシンプルなメリットとして、業務の工数が減るという点も重要なポイントです。
上述したように、役員報酬の設定は様々な要素が絡まるので、その上で適切な金額設定を考えなければなりません。
この計算にかかる時間や決断は膨大なものになり、普段の業務に支障が出る可能性が高いです。

これらの業務をコンサルタントに依頼することで、よりスピーディーに問題の解決に至り、業務の遅延を防ぐことが可能になります。

軽視してはいけない役員報酬の設定

役員報酬を決める際、適切な金額に設定することで会社も支払う役員も、生活や運営面で余分な出費を抑えやすくなります。
しかし、そのためには抑えておかなければいけないルールがあり、それを把握した上で会社の未来を見据えなければなりません。

そんな時に役立つのが、コンサルティングサービスです。
数字のプロに相談することで、会社にとって何がプラスになるのかを判断しやすくなります。